子どもの頃に読んだ「からだのひみつ」の図鑑に心を奪われ、人体に関わる勉強がしたい──
そんな思いで医学部に進んだ私は、当初、臨床医として働く自分の姿をあまり想像していませんでした。
専門課程の勉強ができればそれで十分に楽しい、いわば学生気分のままだったのだと思います。
大学の五、六年の頃に、医学教育には多くの税金が使われていると知り、
「ならば十年ほどは病院で働いて、世の中の人々のお役に立とう」と考えるようになりました。
その思いのまま、1995年に内科医となって大学医局に所属し、市中病院を回りました。
急性期医療の現場で救急外来の当直をしていると、地域の医院から多くの紹介患者さんが運ばれてきます。
受け入れる側として治療に向き合う一方で、送る側にもまた別の大変さがあるのだろうと感じ、
その現場を知るつもりで、数年だけ在宅診療に携わってみることにしました。
2008年に訪問診療へ転向し、気づけばこの領域に身を置き続け、現在に至ります。
ご自宅での療養を希望される患者さんに寄り添いながら、
生活習慣病や認知症、心臓や脳の慢性疾患、そして終末期など、
さまざまな場面に関わらせていただきました。
病院での医療が「数日から数週間の治療」だとすれば、在宅医療は「日々の暮らしの中にある医療」。
その違いの中で、私自身の診療のかたちも少しずつ変わってきたように感じています。
途中には「北海道に移住して、夏は馬、冬はソリで往診をしてみたい」と夢見た時期もありましたが、
最終的には場所は横浜で、馬は車に変わり、訪問診療の診療所を構えることとなりました。
ひとりで右往左往しながら立ち上げた診療所で、まだ足りないところも多く恥ずかしい限りですが、
地域の一員として、必要なときに静かに動ける医療機関でありたいと考えております。
医療は、生活の延長線にあるもの。
ご本人やご家族の思いに耳を傾けながら、医療的な対応だけでなく、
生活の中での選択肢も含めてご提案できればと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
院長 堀田浩一

与那国馬(ヨナグニウマ)の「ブースケ」と